こんばんは。ごきげんよう。大阪府高槻市沢良木町の樋口亜沙子ギター教室&樋口商店より樋口昌紀がお送りします。ご訪問頂き誠にありがとうございます。嬉しいなぁ、読んでくれてるんですよね。でも、今回もかなりマニアックな内容なので面白くないかも知れません。クラシックギター愛好家の方へ、何かの参考になれば幸いです。
ギターがある所に、ギターが集まって来るんですよね~
「あの~ちょっとギターを見てもらいたいんですけど。」
「あ、はい。ありがとうございます。どうぞお持ちください。」
持ち込まれたギターはクラシックギター愛好家なら必ず知っている田村ギターでした。高知県の製作家です。兄は廣さん、弟は満さんです。1960年代から1980年代辺りまでの作品が多く見かけられます。兄の廣さんのギターはP-30~あります。それ以前のギターもありますが多くはこのPシリーズです。本器は1974年製のP-80です。モデルナンバーがそのまま販売価格ですので、80,000円のギターです。当時の大卒初任給は78,700円ですので、かなり高額なギターという事になります。
もう新しいのん買った方がええかな?
ギターの状態はトップ板に割れがありました。弦が張っていなかったので、他にどんな不具合があるかは分かりませんでした。「ほな、1万円でどう?」とおっしゃったので「はい。大丈夫です。」と言って1万円をお渡ししました。「まぁキレイにして、3万円くらいで売れたらいいかぁ」と思ったので。よく「買取は二束三文やしな。エグイで。」という方がおられますが、リスク(故障しているかも知れない。修理費が高額かもしれない。なかなか売れないかも知れない。)も丸ごと買うわけですから、どの業界でも買取価格って結構妥当だと思うんですよね。
ワタシはギターのリペアなんか出来ないので、ひとまずパーツを外してクリーニングします。その段階でいろんな事が分かって来ます。
塗装のクラックがすごい事になっています。やっぱり高くは売れませんね。Guitarra Tamura ギターラ・タムラのPシリーズはモデル100でもサイド・バック材は合板です。弟の満さんはNo1000でオール単板なのに。なので、昔から「お兄さんの廣さんってがめついよね。」って思っていました。てか今でも思っています。
お~ハカランダやんか!合板やけど。
合板になったら、もう何でも同じちゃうんかなと思います。唯一優れているところを挙げると割れない。これに尽きます。古い単板ギターは結構な確率で割れています。
古いギターはペグに気を付けろ!
こないだも言ったんですけど、1970年代辺りの手工ギターは40mmピッチのペグだったりします。これ、今はGOTOHで受注生産になるんです。
幸運な事に動作しています。ツマミに割れもありません。
キレイにクリーニングしました。やりすぎると金メッキがはがれてしまいます。
残留思念を除去せよ!
僕はよく残留思念という言葉を使うのですが、それはこのギターが作られてから何人の手に渡ったのか。その度に思念は強くなって行きます。この田村からはそれほど多くの思念を感じません。おそらく、ワンオーナー品で買ってから2~3年はよく弾いたが、あとはケースに入れっぱなしで48年経った感じだと推測します。
ギターは匂え!クンクン、クンクン。
変態ですね~、サウンドホールに顔を近づけて内部を匂います。ハカランダ単板だったら甘い匂いがします。これは、おばあちゃん家のタンスみたいな匂いがします。「悪くない。」
KOCHI(高知)とスタンプされています。このシリーズ最後のラベルですね。
いいところも挙げてみよう。
このギターで一番のポイントはスプルーストップという所です。guitarra tamuraのPシリーズはほとんどがシダー(杉)トップなのです。スプルース(松)を見たのはこれで2本目です。
今はこんなに真っ黒なエボニー材は少なくなっていると思います。あのマーチンやギブソンは指板材をエボニー(黒檀)からリッチライトという樹脂に変更しています。ナットは片方からは抜けないように削られています。なんか、職人っぽくてカッコいいです。
いよいよ、弦を張ります。
ナット幅は標準の52mm、弦幅は広くて46mmほどあります。いつも弾いているヤマハは41mmですので結構違和感があります。多分、ナットは交換すると思います。トップ割れとナット新調で10,000くらいかかります。こういう事があるから買取ってリスキーなんです。
クラシックギターを習いに来てください。
マニアックなジャンルかも知れませんが、噛めば噛むほど味が出るとても奥深いジャンルです。エレキ、アコギ、クラシックそれぞれの楽しみ方がありますよね。今のところ、樋口昌紀、炎のギター教室では1名の方がクラシックギターを弾いておられます。是非、大人男性の方もお越しください。それかマニアックな方で樋口昌紀を指名する人とか。はい、何でもいいです。
ジャンゴの演奏をさんざん聴いてきたステファン・グラッペリを相手に堂々とクラシックギタースタイルで弾くブリームがすごい。多分、ブリームしか出来ない。ジャンゴのイミテーションにならずに超えてしまいそうな演奏です。多くのギタリストはジャンゴのギター演奏に打ちのめされて立ち上がれないのに。流石です!
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